第34回【入所してすぐの利用者さんが施設生活に馴染むための関わり方5選】

第34回【入所してすぐの利用者さんが施設生活に馴染むための関わり方5選】

「会話の機会を設ける」

入居されてすぐの利用者さんで、お風呂は家で入るからと断っておられる方がいらっしゃいました。トイレのお声かけをしても断って おられ、衣類が汚れて気持ち悪いから仕方なくトイレに向かわれるという方でした。スタッフに介入されるのを拒まれて「自分で するからほっといて!」と初めはおっしゃっていました。そして、夕方になると「今から帰ります」とカバンを持って、玄関の前で お迎えが来るのを待っておられたりもしました。そんな方でしたがお話しするのがお好きで、他の利用者さんとの会話も楽しまれたり、 スタッフが話しかけると笑顔でお話をしてくださり、手作業にも快く答えてくださる方でした。スタッフが根気強く話しかけて、関係性を 築いていくことで、少しずつ介入させていただけることが増えました。何回かに一回は、トイレに行ってくださったり、 お風呂の声掛けにも、着替えだけはさせていただけるところから始まり、足湯だけならしてくださるようになり、体を洗うだけ、湯船に 浸かるだけの日が増えていき、最終的には洗髪、洗身、入浴までしてくださる日が徐々に増えていきました。利用者さんが安心できる 場所にするまでには、スタッフとの関係性も大切で、1日でも早く施設での生活に馴染んでいただくためには、意識して話しかけ、 安心できる存在になることが大切だと学びました。 お話好きで、ご自身から誰にでも話しかけることのできる方もいらっしゃいますが、そうではない方もいらっしゃると思います。 入所されてすぐには、自分から話しかけるのは、勇気がいるし緊張すると思います。誰かわからない方には警戒される方もいらっしゃい ます。スタッフの方からたくさん話しかけることで「ここにいていいんだ。この人は話しかけてくれる人だ」と安心していただける存在に になることが大切だと思います。そのためには、毎日、少しでもお話しする機会を作り、話した内容を覚えて、その利用者さんの好き話、 盛り上がる話題を選ぶことも必要だと思います。事前に利用者さんの情報がわかるのであれば、個人情報に目を通しておくことで、 どんな話をしようか、そんな話はこちらからしない方が良いのかも考えられると思います。

「意識してお名前を呼ぶ」

入居されて間もない利用者様がいらっしゃいました。初めは、不安そうにされてキョロキョロ周りを見渡したり、近くに座っておられる、 他の利用者さんに会釈したりされていました。そんな時に、入居された利用者さんのお名前を他の利用者さんにお伝えしたり、その日の 予定や次に何をするのかをお伝えする時に、お名前を呼んでお声かけして伝えたり、お名前を呼んで「大丈夫ですか?」と声をかけたり するように心がけていました。すると、何か不安なことや、気になることがあれば声をかけていただけるようになり、笑って くださったり、出勤すると1番に声をかけてくださったりと、徐々に心を開いてくださることがありました。介護施設で働いていると、 新しく入居される方と出会う機会があると思います。スタッフは、何度も経験することでも利用者さんからすれば、初めてのことです。 施設に入所されてすぐは、知っている人がおらず、自分のことを知ってくれている人もおらず、不安でいっぱいだと思います。 そんな時に、利用者さんのお名前を意識して呼ぶことで、安心感に繋がると思います。中には、結婚して苗字が変わっている方の中には、 自分のことだと認識されていない方もいらっしゃるかもしれませが、そんな時は、周りからどのように呼ばれておられたのかを、ご家族に 確認して呼び方を変えてみることも必要かもしれません。相手やご家族が不快になる呼び方ではなく、利用者さんが、自分のことを 呼んでいると認識できて、安心できる呼び方をご家族や利用者さんを取り巻くいろいろな方と相談し統一することで、混乱することも なくなるのではないかと思います。名前は昔から呼ばれ続けて、自分だと認識できるものの一つなので、呼ばれることで自分のことを 知ってくれている存在がいるんだと思えて、心地よさや、安心感を与えることができると思うんです。僕自身、入社してすぐの時は 、1人で不安だった時に先輩方に名前を呼んでもらったり、声をかけてもらってホッとした経験があります。その安心感はいくつに なっても同じだと思います。

「他の利用者さんと手作業の時間をつくる」

新しく入居された方は家事が得意な方でした。手持ち無沙汰や初めての場所での不安や緊張からソワソワしておられ、初めは周りの 利用者さんの様子を伺っておられました。洗濯物を干す時に、その利用者さんと、普段からよく洗濯物を干してくださる利用者さんに 声をかけて一緒に行っていただきました。初めは2人で黙々と干しておられたのですが、スタッフが間に入り、お互いの紹介をしながら 3人で話をしながら洗濯物を干していました。作業後は、3人でお茶を飲みながら会話の続きを行うと、緊張されていた利用者さんからは 笑顔も見られ、少し不安が和らいだ表情をされていました。誰でも関係性ができるまでは、話題がないと誰かと一緒にいるのは気まずく なるんじゃないかと思います。一緒に作業をすることで、協力して手作業をすることができます。そして、やり方を教えたり、 教えてもらったりして助けあい「ありがとう」とお礼を伝えることで、話しやすい関係性ができるきっかけになり、自然と会話をする きっかけになるんじゃないかなと思います。ただ、入居されてすぐの利用者さんの身体機能などがわからないと逆にトラブルになったり、 自尊心を傷つけてしまうことにもなるので、どんなことができるのか、何が得意なのかを事前にご家族に確認したり、利用者さんの 日頃の様子から、どんなことができそうかを観察し、会話の中で情報収集することが大切だと思います。初めは「失敗したらどうしよう、 やり方を間違えて、恥ずかしい思いをしたくない」という思いから、拒まれることもあると思いますが、そんな時はスタッフと1対1から 初めて、自信がついたら他の利用者さんと一緒に行うようにしても良いんじゃないかなと思います。

「お礼を伝える」

入居された日から、かばんを手放すことなく抱えて持っておられました。そして、夕方になれば「帰ります。玄関開けてください」と おっしゃる、帰宅欲求のある利用者さんでした。常にカバンを持っておられたので、スタッフ同士でどうしてカバンを居室や、お席に 置いたりされないんだろうか。という話し合いを行いました。その話し合いの中には、必要なものを持ち歩くため、そのかばんを大切に されていて無くしてはいけないからなどの意見もありましたが、いつでも帰れるように準備している。安心できるものを持っていたいから ではないのかという意見もありました。きっと、安心できる空間ではなく不安や緊張が強かったり、安心できる場所に帰りたいという 思いから、かばんを手放さずに持っておられるんじゃないのかなという結論になりました。そして大切に抱えておられるかばんを置かれた その時は、少し不安が取れたんじゃないかなと考えることにしました。その際に、荷物を置いておいてくださいとは伝えずに、 ご本人さんの意志でかばんをおいてくださるのを待ちました。その時に行った方法は、利用者さんにお礼を伝えられるように関わること でした。その方ができることを探したり、小さなことでも、何かお願いできることを探してその都度、お礼を伝えました。他の利用者さん と一緒にできる手作業の時もそうですが、例えば、台車を使って食器を厨房に運んでいただいたり、おしぼりを畳んでいただいたり、 テーブルを拭いていただいたりした後に「ありがとうございました。助かりました。またよろしくお願いします」などの声をかけるように しました。お礼を言われて嫌な思いをする人は、ほとんどいないと思います。誰かの役に立っている、自分には役割があると感じ、 存在意義を感じられると、ここにいて良いんだと思えるんじゃないかなと思います。そうすると居場所につながって、安心できる空間に なるんじゃないかなと思います。何もしたくないという方もいらっしゃると思うので、初めはその方の居場所作りのきっかけのために、 試してみるのもいいと思います。初めは良くても、だんだんと重荷になる方もいらっしゃると思うので、利用者さんのプレッシャーに ならない程度のお願いから始めてみると良いんじゃないかなと思います。そして、徐々にお一人おひとりにあったことや得意なことを お願いすることができれば、もっとその利用者さんだけの役割になり、存在意義が出るんじゃないかなと思います。かばんを肌身離さず 持っておられた利用者さんは、お願い事をして行ってくださる時は、荷物を下ろしてくださるようになり、お礼を伝えることを続ける ことで、徐々にかばんを持たれなくなりました。今では、ほとんどかばんを持ち歩かれなくなり、かばんを持っていると時は、 不安な時じゃないかなと思って接するようになり、その利用者さんの精神的なバロメーターとしても見られるようになりました。

「散歩に出かける」

認知症の症状のある利用者さんで、自宅でもお一人で外出されることは無かったのですが、体力に自信があり、入居することで活動量が 減ったように感じておられました。じっとしていることが苦手な方でした。話しかけられると、お話もされるのですが、ご自身から 話しかけられることは、あまりありませんでした。そこで、ご本人さんの希望で散歩を日課にしました。すると、散歩をしながら 入居するまではどんな生活をしていたか、体力に自信があって、どんな幼少期を過ごして、どんなことが好きなのかなどどんどん 話してくださるようになり、笑顔も増えていきました。初めは、スタッフと1対1で散歩に出掛けていたのですが、他の利用者さんとも 散歩をする機会を作ることで、お互いの話をしながら歩かれて利用者さん同士の関係をつくるきっかけになりました。 施設の中だけでの生活では、息が詰まる思いをする方もいらっしゃるかもしれません。少し外に出るだけで、閉鎖された空間から 出ると、開放的な気持ちになり、話しやすくなるんじゃないかなと思います。大人数の中での会話は混乱されたり、緊張して話しかけ にくいことやもありますが、少人数で会話することで話しやすい環境を、つくることができたんじゃないのかなと思います。 入居されてすぐの利用者さんだけでなく、普段から散歩に出かけることで、いろいろなお話ができて、新たな発見ができたり、 利用者さんとの関係が深まるきっかけになるんじゃないかなと思います。運動はストレス発散にもなり、体力の維持や向上、健康の ためにも続けていきたいなと思います。

最後に入居を検討されているご家族様へ、、、

入居されてすぐの利用者さんのご家族にはできるだけ面会に来てほしいと思います。「頻繁に会いに行くと施設での生活環境に順応 しにくくなるんじゃないのか。別れ際寂しくなって、余計に辛い想いをさせてしまうんじゃないのか」と考える方もいらっしゃると 思いますが個人的には環境の変化をできるだけ緩やかにするためにも、急に全く知らない環境に1人で飛び込むよりは、安心できる 家族という存在が、同じ空間にいることで、少し緊張も解れるんじゃないかなと考えています。それぞれの施設の考え方や、入居される 利用者さんの性格などもあると思いますので、入居される時に、施設の管理者さんと施設の生活に馴染むまでにどうしていけばいいかを 相談することをお勧めします。個人的には、初めは知らない人ばかりの中で生活することになるので、ご本人が施設での生活に慣れる までは安心できる存在のご家族が会いに来てくださることで、利用者さんは安心できると思っています。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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弊社担当よりご連絡いたします。

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(2024年6月4日)

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