第33回【施設で生活をするお年寄りの日常】

第33回【施設で生活をするお年寄りの日常】

「お風呂が苦手な利用者さん」

普段は、歌の番組や、お笑い番組が大好きでよく笑っておられる利用者さんがいらっしゃいました。しかし、
お風呂の声かけにはあまりいい顔をされませんでした。声かけをするスタッフを代えて声かけしてみたり、
何かに集中されている時には声をかけずに、タイミングを見計らって声かけしたりもしていたのですが、断られることが
続きました。そこで、その利用者さんのよく口ずさんでおられる歌を一緒に歌いながらお風呂にお誘いすることにしました。
すると「お風呂いこか」と笑って浴室まで向かってくださり、ご自身で衣類を脱いでくださり、進んで入浴してくださるように
なりました。色んな利用者さんがおられて、断られることもたくさんありますが、1人ひとりにあった対応を見つけられることで
こんなにも、断られることがなくなるのかと驚きました。浴槽内でもずっと歌を歌っておられます。

「観梅」

いつも、施設の廊下でも慎重にゆっくりと歩かれる利用者さんがおられました。「外には出かけたいけど、しんどくなったら嫌だし、
外を歩くのも怖いな」とよくおっしゃっていました。しかし、暖かくなり、施設の近くに綺麗な梅が咲いていると言うニュースを見て
「綺麗やな。見に行きたいな」と他の利用者さんとお話しされていました。なかなか外に出たいと話されることがなかったので、
気持ちが変わらないように、その日に梅を見に行くことにしました。普段は杖歩行をされているのですが、ご本人の不安もあり、
念の為、車椅子を持っていきました。到着すると駐車場から見える梅に「わぁ、きれいやね」と喜んでおられました。
車から降りると、車椅子のことは忘れて歩きだされたので、横に付き添って一緒に歩きました。慎重に歩いておられたので、
足元しか見ておられず「どんぐりがいっぱいやねぇ」とおっしゃっておられました。少し立ち止まって見上げていただくようにお伝えすると
「うわぁ。きれいやねぇ」と満開の梅に驚いておられました。「足元ばっかり見ておったから、どんぐりだけ見て帰るとこやったわ」と笑っておられました。
その後も、ゆっくりと歩いては立ち止まり梅を見上げておられました。
最後まで車椅子を使うことなく、ご自身のペースで梅を観て周られました。施設に帰ってからも「どんぐりだけ見て帰るとこやった」と
笑いながらいろんな方にお話しされていました。

「お見送り」

いつもニコニコしておられる、利用者さんがいらっしゃいました。スタッフのことを労ってくださり、自分のことは後回しで
「ご苦労さま。たまには座りや」と声をかけてくださいます。杖歩行で、介助は必要ないのですが、すり足で歩いておられるため歩行時は付き添いの対応をしていました。
仕事を終えた職員が帰ろうとするのを見かけると「もう帰るんか?ちょっとそこまで送るわな」と、お話しながら玄関まで送ってくださる。
「どこまで帰るんや?電車か?家は近いんか?今日は雨降ってなかったかいな?気をつけてな。次はいつくるんや?」と心配がとまらないんです。
お見送りが終わると、別のスタッフが付き添ってフロアに戻っていかれます。
そんないつもスタッフのことを気にかけてくださるとっても優しい利用者さんに癒されています。

「私のおばあちゃん?」

施設の廊下には、イベントなどで撮影した利用者さんの写真を、飾っています。普段は、写真を気にされることのない利用者さんですが、写真を見て、会話のきっかけになることがあります。
ある利用者さんと写真のお話をした時に、写真に写る自分の姿を見て「これは、おばあちゃんや。どんな人かは知らんなぁ」と仰ったり「これはお母さんよ。〇〇に行ったときの写真かしら」とその時の話をしてくださいました。
その後、ご家族にその話をすると、昔の写真を持ってきてくださいました。
そこに写っていた写真のお母さんは利用者さんにそっくりでご家族も「間違っても仕方ないわねぇ」と笑っておられました。その笑っておられるご家族さんと、写真に写る利用者さんもとても似ておられました。

「お月様」

夕食が終わると、いつもソファーでゆっくり過ごされる利用者さんがいらっしゃいました。テレビを観たり、他の利用者さんとお話をして過ごされたりしています。感情を表に出すことはあまりなく、笑う時もお上品に笑う方でした。そんな利用さんの感情が出るタイミングがありました。
それは、お月様が出ている時です。天気や、周りの建物、時間帯によって毎日見られる訳ではないのですが、見つけた時にはお伝えします。
すると「えっどこから見えるの?」と目を丸くしてソファーからすぐに立ち上がられます。
曇りの日でも雲の隙間から見えるお月様を眺めておられました。何より満月の日を楽しみにされていて、満月の日が近づくと「明日は満月かな。
見られたらいいわね」とお話しされていました。
そして、満月が出た日にお月様が見られるとご家族に電話をかけ「今ね、お月様を見せていただいたの。今日は満月よ。そっちからも見える?」とお話しされます。
いつ満月が出るのか把握するために、月齢カレンダーを用意しました。毎日、カレンダーを見て、今日のお月様と次はいつ満月が出るのかという話をして楽しみにしておられました。

「指相撲」

100歳を超える利用者さんがいらっしゃいました。発語もあまり多くなく、小さい声で話されます。コミュニケーションも難しく、
表情を読み取ることが難しかったのですが、握手をするように手を繋ごうとすると、なぜか指相撲をする形に手を組まれます。
そして、スタッフの親指を押さえようとされるんです。思った以上に力が強く、長い指で不意に押さえられるので指を戻すことができないんです。
利用者さんの顔を見ると、スタッフの顔を見て小さくニヤッとされています。
そして、指相撲でスタッフが勝つと、悔しそうな表情をされます。右利きの方なのですが、なぜか左指の方が力強く、指の使い方が上手いのでなかなか勝つことができません。
指相撲をしている時は、表情の変化がよく見られて指にもしっかり力が入っています。その力のおかげなのか、ご自身でお箸を持たれて、
食事を召し上がられています。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


★ご興味ある方は直接LINEにメッセージ下さい!
弊社担当よりご連絡いたします。

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(2024年5月2日)

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