第16回【衝撃を受けた利用者様5選】

第16回【衝撃を受けた利用者様5選】

衝撃を受けた利用者様についてのエピソードを教えて欲しいとの連絡を頂いたことがあり、今回は私が介護士歴13年の中で強烈に印象に残っている凄い利用者様のエピソードをまとめました。結構強烈な印象の利用者様っていますよね…。あなたは出会った事ありますか?嘘のような本当の話です。

エピソード内容は個人情報の保護の観点から多少事実ではない事を交えながらまとめさせていただいております。話を大きくして書いている事はありませんので、ご了承いただけましたら幸いです。

【1. 自殺願望が強い】

始めて介護に携わった従来型特養での話です。体格が良く結構若めの男性利用者様がいました。事前情報の時点で自殺願望があることは知っていましたが、実際に関わってみると想像以上に大変でした。介護ってこんな方も見るのかぁ~と驚愕したのを今でも覚えています。後にも先にもこの方以上の方に出会ったことはありません。

自殺願望の強い男性利用者様(以後A様)は力も強く私が就職した事はまだ禁止になっていなかったY字拘束帯を使用していました。それでも車いすごと自分で移動し自傷行為をされてしまうため柱にも縛っている状況でした。今では考えられない状況ですが、昔はこういうケアが多かったです。

頑丈な柱に縛っていたため身動きが自由に取れず、「殺してくれ~。」「警察を呼んでくれ~。」と大きな声を出しており、従来型特養だったこともあり他利用者様から苦情の嵐でした。本来ならお部屋で過ごしていただきたいのですが、お部屋で1人にする事も難しく常に職員の目が必要な方でした。

ベッド上で休んでいただいていた時、排泄介助で部屋に向かうとナースコールを首に巻いていたりベッドから床に降りて消火器や消化ホースを持ち出して自傷行為をしようとされたりしていました。4点柵になっていましたが難なく降りてしまい全く意味がありませんでした。

そのため職員の目があるリビングで過ごしていただくしかなかったのですが、ある日いつものように怒鳴っているなぁと思っていると目の前を何かが高速で飛んでいきました。確認するとなんと!ブレーキの棒の部分が床に落ちているではありませんか!!

急いでA様の方を見ると反対側のブレーキを折っている所でした!“ブレーキって折れるの?”と驚いたと同時に他の利用者様へ危害が加わらないかという恐怖と職員が間に入ったとして怪我をしない保証はなく“どうしよう”という状態でした。

すぐに大きな声を出して他職員へ周知し職員数名がかりで対応しました。事なきは得ましたが、どうしたらいいのか本当に分からず困っていました。この後私の異動があったためA様の対応についてどうなったのかまでは残念ながら覚えていないのですが、後にも先にも一番の恐怖体験でした。

自殺願望を持たれている方が利用されることは多くはありませんがA様以外にも数名対応したことがあります。自傷行為をされるためハサミや爪切り等自傷行為しそうなものの持ち込みは禁止したり、ズボンやトレーナーなどについている紐を全て外したりあらゆる可能性を考えて対処しています。

【2. セクハラが凄い】

高次脳機能障害による衝動が抑えられない男性利用者様(以後B様)、知能犯的なセクハラをする男性利用者様(以後C様、D様)と2タイプのセクハラを経験しました。介護とセクハラって結構避けられない非常に嫌な問題だと感じています。

“認知症だから”で片づけられてしまう事が多いですが、介護施設以外で行えばそれはれっきとした犯罪で逮捕されるような事も我慢しなくてはならない環境を本当に変えていかないといけないと感じています。セクハラが原因で病んで介護の仕事から離れていく職員も少なくありません。

始めて酷いセクハラを目の当たりにしたのは従来型特養時代。ショートステイ利用者のB様でした。高次脳機能障害があり、自分の思い通りにならないと感情が抑えられず怒鳴る等の事前情報はありましたが、セクハラについては一切記載がありませんでした。

当時私はショートステイ担当で入退所を主に担当しており、日中のケアは特養職員さんが行っていました。セクハラの被害を知ったのはある女性職員からの相談でした。ナースコールがあり部屋に伺うと、ナースコールを口に入れなめまわしそれを手に取れと強要されるとの事。

断ると怒り出し部屋を出ると再度コールを鳴らし同じ要望をしてくるとの事でした。男性職員が対応するときはそのような事が無いとの事だったため、B様が利用される日の対応は男性職員と決めました。男性職員には「女性職員を呼べ。」と要望していましたが断ってもらいなるべく女性職員が関わらないようにしていました。

全介助の方だったためセクハラ行為が酷い時は部屋への訪室を控えていたのですが、こういう時はなぜか動けることが多く、ベッドから転落することが次第に増えていくようになりました。こうなると訪室しないわけにはいかなくなります。訪室するたびにセクハラを受けるか、行かなくて転落するか…。

非常に困りました。当時勤めていた施設での男性職員の割合はとても少なくほぼ女性職員だったため勤務を調整しても女性職員しかいない事が多かったので、どう対処するか何度も会議やカンファレンスを開いていました。事務所職員も加わりなるべく男性職員が対応することで方向が決まりました。

しかし、夜勤ばかりはどうにも調整が難しく職員2人とも女性職員になってしまう事もありました。その場合は開始早々からコールの嵐。ナースコールをなめるだけでなく、陰部に入れてそれを触らせるなどエスカレートしていきました。女性職員がどんどん憂鬱そうになっているのを見ているのが辛い程でした。

自分が夜勤の時であれば対応するのですが、送迎等もあるため中々夜勤に当たらず…。そんな時はB様が寝付くまでB様の対応をしてから帰るようにしていました。誰も助けてくれないと思いながら仕事をするよりも誰かがかばってくれていると思えるだけで精神的負担は軽くなるのではないかと考えていました。

男性相談員にも協力してもらい、あまりにも要望が酷い時や女性職員同士の夜勤になってしまう時の宿直を変わってもらう等あの手この手を使って対応していました。あまりにも酷かったので数か月の利用後からは利用を断っていた記憶があります。

次のC様、D様についてはユニット型特養の時の出来事です。こちらもショートステイご利用の方々で、歩行や着替え等自立をされている方々でした。初めの頃はセクハラしそうな感じは全くなかったのですが、利用期間が長くなるにつれ徐々にセクハラ行為が目立ってくるようになりました。

C様D様共に認知症の症状はあるものの在宅で過ごせる程度。受け答えもしっかりしている方々でした。ショートステイユニットには女性職員が多かったこともあってか次第にエスカレートし始め、部屋に衣類を返却に行った職員の腕を掴んでベッドに押したおしたり、キスをしようとしたりし始めました。

職員が大きな声を出して助けを求めたため気が付きましたが、もし1人の時間帯だったらと思うと恐怖しかありません。男性利用者様で足腰がしっかりしているため力はとても強く、振り払えなかったと話していました。仮に振り払ったとしても怪我をさせてしまうリスクもあり手加減をしなくてはなりません。

こんな怖い介護って無いですよね…。またお風呂介助の際は自分で身体を洗えるにも関わらず陰部を洗うようにと強要したり、浴槽の中で意識が飛んだぶりをして「大丈夫ですか?」と声をかけに近寄った時に腕を引っ張り浴槽内に引き込もうとしたりする程知能犯でした。

さらには職員が1人になる時間帯を知っていてあえて1人になった時間になってから部屋に戻り着替えをして欲しいと要望したり(自分で出来る)、「揉ませてくれよ。」と迫ったりしていました。1人になる時間帯が恐怖でしかありませんでした。

お風呂は男性職員が対応する、着替えは職員が2人いる時間帯に2人で部屋に入り対応する等決めました。ここの施設での問題は上司で、セクハラの件を訴えても「減るもんじゃないから揉ませてあげたら。」との1言。女性職員たちの顔が凍り付いたのは今でも鮮明に覚えています。勿論私もその1人でした。

1人になってしまう夜勤帯はどうにもできないため、排泄介助時にセクハラ行為が見られる時は協力ユニットの職員に応援要請していいという取り決めをして対応しました。リビングに起きてこられることもあり、夜勤に行く事が億劫で仕方がありませんでした。

利用者様から介護士へのセクハラ問題ってあまり表ざたにならないですが深刻な問題だと感じています。女性利用者様から男性職員へのセクハラもあるので、利用者様の権利だけでなく職員の権利も守ってもらえるような仕組みになってくれると安心して働くことが出来るのになぁ~と思っています。

【3. 家族が亡くなっている事に気が付かない】

デイサービスを利用されていた利用者様(E様)は奥様と2人暮らしでした。ある日のデイサービス利用時、送迎に向かった職員が異臭に気が付き家に上がると奥様が亡くなっていました。デイサービスは週2程度だったためいつ亡くなったのか分からない状況でした。

E様は認知症の症状が強く、何を聞かれてもニコニコと笑って「そうだねぇ~。」としか話をされませんでした。状況を伺うにも全く話を聞くことが出来ません。今のご時世2世帯で生活する事はとても少なくなってきています。

高齢者夫婦だけで生活をされている場合このような状況が大いにあるのではないかと思っています。地域との関わりやご家族様との関わり次第で発見がとても遅くなることもあり得ます。コミュニティの形成をどうしていくかが課題になってくると思っています。

【4. ヤバイ異食】

認知症の症状が強く自分の世界を過ごされている事が多いF様。いつもニコニコと施設内を自由に歩かれていました。どこに行くのか尋ねると「山登りに行くのよ。」や「あの公園にねっ、遊びに行くの。」といつもお出かけに行く話をされていました。

お出かけする為に荷物を探して歩かれている事もありました。ある日の事、口をもぐもぐしながら歩かれていたF様。いつものように「どちらに行かれるのですか?」と尋ねると「あのね…。」と話し始めたとたん、口から強烈な異臭が…。

もぐもぐと口を動かされており、「何を食べているんですか?」と尋ねると「えっ?お饅頭があったからね、おいしそうだと思って食べてみたの。」とにこっとされていました。同時に私と隣にいた職員は“ヤバイ”と焦りすぐに手袋をはめて口を開けさせてもらいました。

F様はお饅頭が取られると思い嫌がっていましたが明らかな異臭!!お饅頭なんておやつの時間でも出る事が無く、差し入れもない。恐る恐る口を開けると茶色い物体が!!!そう、ウンチを食べていました!!思わず私ももう1人の職員も「うわぁ~!!!」と大きな声を出してしまいました。

一体どこで食べてきのか?従来型特養だったため部屋で使用しているポータブルトイレも含め広範囲を探す事に。するとある部屋のポータブルトイレの中に排便の形跡があるのに物体が無い場所が…。他人のポータブルトイレを開けてお饅頭を見つけたと思い食べていました。

どうやって食べたのか尋ねると「スプーンがあったからね、すくって食べたのよ。」と…。どこにスプーンを隠し持っていたのかと驚きました。排泄物や消臭液、ティッシュを食べてしまっている可能性があり、すぐに看護師に報告しました。経過観察となりましたがしばらくは話をするたびに排泄臭が口からしていました…。

その件を受け、ポータブルトイレの管理方法について検討されることとなりました。日中も使用される方だったためこまめな訪室と処理をする・F様の所在確認をする程度しかできませんでしたが、それ以降は同じ異食はありませんでした。

異食って結構介護施設では多いですよね。強烈だったのはF様の異食でしたが、これ以外に多いのがポリデントの異食です。また、ティッシュやボタン、消しゴム等の異食もありました。手の届く所に置かない、食べてしまうかもしれないと思う事が事故を防ぐには大切になってきます。

【5. 施設から居なくなる】

これは数か所の施設でありました。自宅で最後まで暮らしたいという気持ちは痛い程良く分かります。納得して施設に入る方は少なく、うまい具合施設に連れてこられそのまま入所になる方は少なくありません。家に帰りたい利用者様と施設に泊って欲しいご家族様の希望どちらの気持ちも分かるので複雑です。

だいたい帰りたくなる時間は日が暮れる夕方が多く「家に帰って夕飯の準備をしなくちゃ。」と話される方が多い印象です。あの手この手を使って家に帰りたいと思う意識を他に向けられないかと試しますが、落ち着かれるようになるまでとても大変です。

職員の目を盗んでサッといなくなってしまう方も居て、ほんのちょっと他利用者様の介助をしている間に姿が見えなくなっていたなんてこともあります。事務所職員が気付いて止めてくれればいいのですが、デイサービスの帰る時間帯に他利用者様に紛れ込んでしまうと難しい事もあります。

中には他利用者様の面会に来たご家族様と一緒に玄関まで行き外に出てしまう方もいらっしゃいました。すたすたと歩かれていたため、違うご利用者様のご家族様と思っていたとの事でした。確かに利用者様なのか、ご家族様なのかの判断は職員以外の方では難しいかもしれないと思いました。

姿が見えないと急いで探し回りますが、施設内で見つけられない時は本当に焦ります。交通事故にあってしまう危険性や方向が分からず街をさまよってしまう可能性があるからです。冬場は凍死、夏場は熱中症など命に関わる可能性も大いにあります。見つけられるまで非常に緊張感が漂います。

今までの経験の中で驚いた離設は2回程ありました。1回目は直接関わっていないのですが、2階に入所されていた利用者様が避難用の滑り台を降りて外に出てしまったことです。たまたま滑り台の降り口付近を見ていた職員がいて気が付き行方不明になる前に気が付けたので大丈夫でした。

2回目は1階の利用者様で部屋の窓のカギを開けて外へ出られました。これもたまたま外の防犯カメラを見ていた職員がいて外に出ている事に気が付きすぐに対応したので事なきを得ました。職員は必要最小限の人数で対応しているため常に見守っている事は出来ません。難しいです。

他利用者様のケア中に居なくなってしまった場合気が付く事が遅れる可能性もあります。常に戸締りや所在確認の必要があり、ちょっとした物音にも反応するようになりました。ずっと気を張っているため仕事終わりはどっと疲れが襲ってきます。

衝撃を受けた利用者様いかがでしたでしょうか?結構重い内容だったかもしれません…。ほとんど表に出ないことですが、介護士って介護だけでなくこういう大変な方の対応もしなくてはなりません。サービス業とはいえ我慢できないことも多いです。

介護士って虐待の報道は沢山され、利用者様の人権についてはどんどん改正されていますが、介護士の人権を守ってくれるようにならないと介護士離れは解決しないのではないかと感じています。施設としても対策をしっかりと考えて職員を守れる施設が増えると介護士としては嬉しい限りです。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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