第31回【介護職員が排泄介助で気を付けること6選】

第31回【介護職員が排泄介助で気を付けること6選】

1.自尊心を傷つけない。

トイレの声かけを断り続ける利用者さんがおられました。時間を置いて、何度かに1回の声かけで
トイレに入ってくださるのですが、声かけをしても「今は行きたくない。さっき行ったとこ。
トイレぐらい自分で行ける」とおっしゃられていました。行くタイミングは人それぞれなので、
無理強いすることはなかったのですが、間に合わず、衣類が汚れてしまう事も少なくありませんでした。
そのため、尿路感染等の清潔保持の観点でどういうタイミングで声をかけたらトイレに応じていただけるだろうと、
職員で話し合いをした結果、『立ち上がられた際に声をかける。トイレの前を通られた際に声をかける。
体操の前後で声をかける』というのを今まで以上に気をつけようということになりました。
すると、お断りされる事もありましたが、トイレに入ってくださる回数は増え、ほとんど断られることが
なくなりました。その中でも、フロアから離れたトイレの前を通られた際に、小さな声でジェスチャーを交えて
お声かけすると、トイレに入ってくださることが多かったのです。やはり、周りがいるところで声をかけられるのは
恥ずかしいものです。今までは、お断りされることが多かった利用者さんでしたが、今は声変えすると「行っとこか」と
おっしゃられ、汚染があった際には「汚れてたんやな。ありがとう」とおっしゃってくださるようになりました。
トイレにお誘いする際に大きな声で「トイレに行きましょうか」など他の方に聞こえるような大きな声で、
声かけしてしまうことはありませんか?「そういえば行きたいな。行っておこうかな」と思っていても、
周りの目があると恥ずかしい気持ちになり「今は行きたくない」となることがあると思います。
声をかける時は、小さな声でご本人にコソっと伝えたり、周りに他の利用者さんや職員がいないところで
声をかけるだけで、笑顔でトイレに向かってくださる方は、多いと思います。トイレ介助中も同じように、
トイレの中で大きな声で話すのは控えることが大切です。他にも、立ち上がられたタイミングで声をかけたり、
体操や、レクリエーションの前後に声をかけて、ついでに行っておこうかと思っていただけるように、
配慮する事で相手の気持ちを傷付けずに、声をかけることができると思います。パッド内汚染、衣類汚染された時には、
失敗してしまった、恥ずかしい、申し訳ない、情けないという気持ちになります。そのため、利用者さんの
気持ちに寄り添い、「大丈夫ですよ。すぐ終わりますからね。」などの声かけを行い、いつもより話すスピードを
ゆっくりすることで、安心できる声かけになります。あとは、できるだけ早く丁寧に介助する事で、
恥ずかしい時間が少なくなります。

2.プライバシーに配慮する。

トイレの際、見守りをしていないと立ち上がられて、ご自身でトイレから出てこられる利用者さんがいらっしゃいました。
動きも機敏で、転倒される可能性もあったので、トイレ内での見守りを行っていました。
しかし、トイレに座られる時間が短く、排尿はされても排便がなかなか出ませんでした。出ない日は下剤を
服用されていました。トイレに座れていないんじゃないかと思い「お腹に力を入れてゆっくり座ってくださいね」と
声かけをして、トイレから出て見守っていると、排便がありました。その後も毎日ではないですが、排便が出る回数は
増え、下剤の量も減りました。やはり、トイレに座る時間は1人でないと、落ち着いて排泄できないんだなと思いました。
その経験から、トイレの際に、介助が必要な方であっても、トイレに座っていただいた後は、その場を離れて、
お1人でしていただくことが大切だと思います。トイレの外から見守りをして、終わったら声をかけていただいたり、
コールを押していただくなどの対応をします。何かあれば、すぐに反応して、対応できる準備をしていればいいと思います。
その際も扉を閉めましょう。やはり、排泄中というのは人に見られたくない空間です。リラックスして、排泄できるように
するためにもその場を離れることが大切です。多床室でのおむつ交換の時もしっかりとカーテンを閉めて、声をかけるときには
静かに声をかけるといいと思います。ベッド上での交換時は、衣類を捲し上げすぎないように気をつけたり、
お腹の上にバスタオルをかけるなどすると、少しは恥ずかしい気持ちが和らぐのではないかと思います。

3.介助をしすぎない。

排泄時の着脱は、できるだけ利用者さんに行ってもらうようにしています。入居当初は、立っていられる時間も
短くて、着脱にも時間がかかっており、介助する事が必要な方がいらっしゃいました。できるだけ、介助を
しないように関わっていると、徐々にご自身で行われるようになり、ついには介助が必要なくなるまでになりました。
それでも、見守りが必要なため、心配する職員もいましたが、嬉しい悩みになりました。
衣類の着脱や立ち上がりの介助などご自身で、できるところは、ご自身に行っていただくことで、
申し訳ない気持ちにさせてしまうこともないですし、身体機能の維持や向上にもつながります。
介助しすぎてしまうと、できることが、どんどんできなくなってしまいます。
介護者が行えば早い事かもしれませんが、利用者さんの能力を奪う存在になってはいけません。
利用者さんにしていただけること、難しいことを見極めて、できることはお任せすることが大切だと思います。
そして、利用者さんの中には「申し訳ない。できることは自分でしたい。子供じゃないんだから触らないで」と
色々な思いの方がいらっしゃるので、相手の気持ちに寄り添うことも忘れてはいけません。

4.排泄間隔を把握する。

新しく入居された方は、排尿間隔がわからないので、記録をつけます。その方は、衣類が汚染されることの多い方でした。
だからと言って、トイレにお連れする時間が早いとトイレにも排泄がありませんでした。、記録をつけていると、
必ず食後には排泄があることがわかり、そこからは、毎食後、それ以外は2時間空くまでに必ずトイレにお連れするように
決めました。すると、衣類汚染は減り、パッド内汚染のないこともありました、パッド汚染のない時は、とても嬉しく
感じました。食後にトイレにお連れしようと思ったのは、副交感神経が働き、リラックスしている状態で、排尿が出やすく
なっているということと、食べ物を消化しようと胃や大腸が動くため排便が出やすいからというこがあったからです。
高齢になると1日のトイレの回数はだいたい8〜10回で、2時間に1回程度と言われています。
それまでに、トイレに誘導することができれば、自尊心が傷つくこともないですし、汚染して気持ち悪い思いを
されずに済みます。人によって排尿間隔は違いますが、記録をつけて、把握することで、トイレで気持ちよく
排泄ができるようになります。
排尿間隔を把握することで、介助者の介助量の軽減にもつながります。介助量が減ると、利用者さんとの関わる時間も
増えると思います。

5.できるだけおむつを使用しない

僕は学生時代、おむつ体験をする授業で、おむつをつけて授業を受けたことがありました。
他の事に集中できず、つけたあと廊下に出ると、他の学生とすれ違うのも恥ずかしかったのを
覚えています。その後、教室で映画を見たはずですが、集中できず内容は全く覚えていません。
どんなに集中しても、簡単に出せるものではなく、排便はおむつをつけている状態ではトイレに
座っていたとしてもできなかったと思います。結果、排尿はなんとか出しました。しかし、周りに人が
いる状態、トイレではない環境ではあの時だけだったからできたんじゃないかと思います。
出した後も、服が漏れている感覚もあり、その場から離れたいと思ったことは未だに忘れることはできません。
みなさんは、おむつの中で排泄したことのある人ならわかると思いますが、おむつの中での排泄は
とても難しいです。ベッドに寝ていたり、椅子に座っていたり、他人が生活している空間で、排泄することを想像して
いただけたらわかると思います。排泄するには、誰にも見られないという安心感がある空間でなければ、リラックスして
排泄することは難しいです。身体の仕組み上も排泄するには前傾姿勢になり、お腹に力を入れやすい姿勢があり、
腸と肛門の位置も関係しているからです。排泄のしやすさだけでなく、おむつをつけることへの抵抗感、屈辱感があると
思います。おむつをつけたくてつけている人はいないと思います。職員の都合で安易におむつを使用してはいけません。
おむつを使用せずに、2人介助でトイレ誘導を行ったり、ポータブルトイレを使用することも検討できます。
日中と夜間帯でも対応は変わってくると思いますが、利用者さんの生活リズムに合わせて、できるだけトイレでの
気持ちい排泄ができるように考えていくことが大切です。

6.排泄物の確認をする。

利用者さんの体調の把握は難しいですが、排泄物の確認を行うことでわかることはたくさんあります。以前、排便に
血液が付着している利用者さんがいました。すぐに主治医に相談し、受診することができました。特に問題はないとの
ことで帰ってこられました。この時は、大きな病気ではなかったのですが、気づいていないと受診する事も
できていなかったですし、利用者さんの異変に気づく事もできていなかったかもしれません。普段から排泄物の
観察を行っていてよかったなと思いました。
排泄物の色、匂い、形状、量は、利用者さんの体調を把握する上で大切なことです。
排尿の場合、水分摂取量が少ないと濃い色の排尿が出たり、糖尿病の方は少し甘い匂いの排尿が出ます。
血尿がでているときは、病院受診を早めにするなど、見ていないと気づけないことがあります。
排便でも下痢していないか、硬い便が出ていないか、消化されていない便は出ていないか、便に血液は混じっていないか
しっかりと量は出ているのか、など体調を把握するためにも観察することが必要です。
高齢になると、痛みに鈍感になり、利用者さんが伝えることが難しく気づくことが遅くなってしまうため、
排泄物からの情報は大切です。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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