第3回【救急搬送時に意識している事】
救急搬送の時って“どうしよう”“どうしよう”と焦ってしまいがちですよね。焦らないようにと思えば思うほど余計に何をしたらいいか分からなくなる悪循環へ陥ります。
救急対応に不安を抱いている介護士さんは多いのではないでしょうか?12年間の介護士経験の中で救急搬送を何度か経験し、その経験を元に意識するようになった事をまとめました。私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。
Contents
1.オンコールや救急車を要請する前にする事
救急車を呼んだり、看護師にオンコールしたりする前にまずやることは
・外傷確認
・フルバイタル測定(体温・血圧・SPO2)
・意識の有無
・呼吸の有無
の確認です。
呼吸停止の時はすぐに応援を呼び、看取りでは無い方の場合は直ちに心臓マッサージを行います。応援者にはAEDの準備並びに看護師へのオンコールを依頼してもらいます。救急車要請の指示があった場合は施設にもよりますが、宿直者や施設長にも連絡してもらいます。
心肺蘇生について看取りを取り入れている施設では注意しなければならいことがあります。それは心肺蘇生をしようとしている対象者が看取りの方かどうかという事です。看取りの方の場合は心臓マッサージを行わない為間違って実施してしまわないように確認が必要です。
逆に看取りではない方を看取りと思ってしまい心肺蘇生をしなかった場合、警察官が来て事情聴取が行われます。誰が看取りで同意書をもらっているのか、ご家族様の要望はどうなっているのかをしっかりと確認しておくことが重要です。
出来れば一覧などにしてすぐ確認できるようにしておく事や、個人ファイルの一番初めのページや表紙裏などに重要な情報をまとめて貼っておく事をしておくと探すのに焦らなくていいと思っています。
また、心肺蘇生を行う際はマットレスの上では力がうまくかからず分散されてしまうためベッドから床に下げて心臓マッサージを行った方がいいと教わりました。除圧マットやエアマットでは体重をかけてもそのままマットに食い込んでしまうということが想像できるかと思います。
2.オンコールや救急車を要請する前に整理する事
オンコールや救急車を要請する際に電話した職員が混乱したままでは救急隊も困ってしまいます。まずは一旦冷静になることが大切です。1人で不安な時は必ず応援を呼び一緒に確認しながら行う事も冷静に対処できる一つの手です。
落ち着いたら“5W1H”を意識して状況を整理します。心肺停止の時はそんな余裕なんてないかもしれませんが、最低限の情報は伝えられるように頑張りましょう。
・いつ?
・どこで?
・誰が?
・何を?
・どのように?
・何故?
を整理します。
また救急車要請の場合はこの他に ・どこの施設か
・性別
・既往歴
・認知症の有無
を聞かれることが多いです。
今の時代はコロナワクチンを何回接種しているかも聞かれます。救急車要請時は個人ファイルを手元に準備しておくことをお勧めします。【1.】でも書きましたが、個人ファイルの初めのページに救急隊に聞かれる項目をピックアップした物があるとすぐに対応できるのでおすすめです。
3.救急者が到着するまでにする事
救急車が到着するまで場所にもよりますが概ね10分程度です。その間利用者様の状況確認、場合によっては心配蘇生を続けながら個人ファイル、保険証、自分のスマホ(施設への迎えの電話やご家族様とのやり取りに使うため)、現金等を用意します。
施設にもよりますが宿直者へ救急車要請をした旨連絡し、救急車の誘導から救急隊を現場まで案内してもらいたい旨依頼します。ここを忘れがちなのですが、救急隊から誘導の依頼がありますので忘れず依頼しましょう。
時折、失禁してしまっている利用者様がいます。心肺蘇生が必要だったり頭を打っていたり、意識消失していない時に限りますが、排泄介助や衣類を着替えておくこともあります。この時はおむつを当てておいた方が安心です。(おむつが無い場合は一番大きいサイズのパッド)
ベッド上で救急隊を待つときはストレッチャーが入りやすいようにベッドの位置を移動したり、棚の位置を移動したり、柵を外したりしてスムーズに引継ぎが行えるように動線を意識しています。
4.時系列をまとめる
看護師や救急車要請の際に何時に何をしたかメモしておくことが大切です。
例えば
〇時:転倒して頭にこぶが出来た程度で意識あり。
△時:頭痛の訴えがあり意識朦朧。呂律が回りにくい様子あり。ふらつきあり。
□時:嘔吐と同時に呼吸停止、バイタル測定し看護師へオンコール。救急車要請あり要請する。
×時:AED実施し1回の電気ショックを実施
というような感じで簡単でもいいのでメモに残しておきます。
実際に対応している時は急いでいるためいつ何をしたのか後から思い出そうとしてもなかなか思い出せないものです。記録に残したり救急隊へ報告したりするためメモが大事です。
ちなみにですが、119番通報の時と救急隊にそれぞれ同じ内容を聞かれるため2回説明します。メモは記録用と救急車に同乗する人用の2枚用意できるといいです。救急者に同乗する職員に渡してしまうと記録をする際になくて記録できずとても困ったことがありました。
5.ご家族様へ連絡する
救急車要請した後、ご家族様へも事情を説明し救急車要請している旨連絡します。病院は受け入れ先が決まった段階で再度ご連絡する旨お伝えし、病院へ行ける準備をして頂きます。
搬送先が決まったらすぐにご連絡するようにしましょう。待っている間、ご家族様は不安でしかありませんので、言葉選びにはいつも以上に配慮を心がけています。「道中気を付けていらしてください。」等一言付け加えられるように意識しています。
6.記録に詳細を残す
【3.】でメモした内容を記録に残します。できれば忘れないうちに詳細をすぐに記録できると良いのですが、実際は他の利用者様の対応もあるためすぐには記録できないことの方が多いです。メモしておくと業務が落ち着いてから記録が出来るので本当に助かります。
忘れがちなのがオンコールしたときの記録です。何時にオンコールしてどのような指示を受けて対応したのかまで記録に残しましょう。記録は万が一何かあった場合自分を守ってくれる証拠になります。自分の身を守るためにも忘れずに記録したいですね。
私は何度か記録のおかげで救われたことがあります。発見した時からなぜ発見できたのかの理由から記録に残すように意識しています。
7.職員のフォローを忘れない
これはリーダーをしていた時に意識していたことです。救急搬送ってそう多く経験する事ってないですよね。日中なら看護師が居てくれたり、事務所の職員が残っている時間帯だったら手伝いに来てくれたりすることもあります。
とはいえ、初めて救急車要請をする時やそんな状況に出くわした職員のメンタルの疲労は計り知れません。新人さんであれば尚の事です。「大変でしたね。」「ありがとう。」「何か確認しておきたい事や分からないことありましたか?」等声をかけるようにしています。
また、救急搬送になりそうなことが予見できる場合は一人の時間帯に対応できそうか声をかけ、不安がある場合は一緒にファイルを準備するところからオンコール、救急車要請までの手順を実際の現場を想定し行うようにしています。
それでも不安は残りますし、何度シュミレーションしても実際になると焦って頭が真っ白になってしまうこともあります。目で見てすぐ分かるように図にまとめたり、いつでも連絡していいと伝えたり安心して業務に取り組めるような環境整備も大切だと感じています。
以上7つが救急搬送時に私が意識している事です。救急搬送を何度か経験しても“こうしておけばよかった”“次はこうしていた方がいいな”と思うことがあります。感じた修正点は次回に生かしていきたいなと思っています。皆さんが救急搬送時に意識している事はなんですか?
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(2022年10月11日)