第5回【落ち着かない利用者様が落ち着いた対応3例】

第5回【落ち着かない利用者様が落ち着いた対応3例】

ショートステイやデイサービス、施設入所などを利用する際、認知症の症状によっては知らない所(施設)に急に連れてこられて混乱してしまう事ってありますよね。家に帰りたいと思う事は当たり前の事なのですが、仕事をする上では対応が難しいなぁと感じる事もあります。

皆さんも経験した事があるのではないでしょうか。今回は事例を元にどうやって対応して落ち着くようになったのかを説明いたします。少しでもお役に立てれば嬉しいです。

【事例1】

新規ショートステイ利用者A様。着替えや食事等は自立。お風呂は嫌い。家は自営業をされており、こんな所(施設)でのんびりしている場合じゃない、家に帰らなくちゃいけないと施設から出ていこうとされる方。昼夜の感覚が無く、常時離施のリスクあり。力が強く、職員を押し倒す程。

ご家庭の事情でショートステイを利用されることに。以前は他のショートステイを利用されていたとのことですが全く落ち着かず利用を断られてしまい、ここの施設を利用されることになりました。

施設に来られる時は嫌がる事もなく来られますが、ユニットに到着し数分すると「こんな所に居られない。家に帰って仕事をしなくちゃいけないんですよ。私がお店に立たないといけないのにゆっくりしている場合じゃないです。」と落ち着かなくなられていました。

お店はご家族様で行っているため少し休んで欲しいと施設に来られているとお伝えしても「そんなこと言っている場合じゃないんですよ。」とお店が心配でならないご様子でした。お風呂も「入っている場合じゃないですよ。」や「家で毎日入ってるんだからこんなところで入らなくていいですよ。」と頑なに嫌がっていました。

無理に入って頂くと余計嫌な思いが強くなってしまうため、しばらくは嫌がったら入らないという事で対応することに。夕方になると「こんな時間だから家に帰らなくちゃ。」とさらにソワソワしてしまい、夕食も手につかない程でした。

泊まりである事、家には帰ることが出来ないという事を伝えがちですが逆効果になると思いその言葉は使わないようにしました。では何をしたか…

①一緒に納得が行くまで散歩する。

②疲れたころに部屋に戻り、部屋を用意したので休んでいってほしいと伝えるようにした。

③ご家族様に急用が出来ていしまい、遠出していて帰ってこられないため今晩は泊って行って欲しいと連絡があったと伝える。

④男性職員に協力を依頼しPHSで旦那様のふりをして話をしてもらう。

等です。

①一緒に納得が行くまで散歩する。

家に帰りたい気持ちは痛い程伝わってきました。歩いてでも家に帰ると話されるときは荷物と靴を持ち施設の外まで散歩するようにしていました。道が分かれば一緒に疲れて休まれるまで歩くつもりでいましたが、施設を出るとそこは見慣れない風景。「あれこっちかな?あっちなか?」と自分で思う方に歩かれていました。納得が行くまで一緒に歩き「ダメだ。もう疲れた。休む。」と話された時に施設に戻り玄関の椅子で小休憩。再度変えるか尋ねると「疲れて歩けない。」と話されることが多い為お部屋にお連れしていました。

②疲れた頃に部屋に戻り、部屋を用意したので休んでいってほしいと伝える。 疲れた体は横になって休みたいと感じます。泊まる部屋を用意したと伝えるのではなく、休んでいい部屋を用意したと伝えお部屋に案内していました。泊まると聞くと警戒心が生まれてしまうため休む部屋という事がポイントかなぁと感じています。

好きなだけ休んでいただき、起きてきたら再度散歩という事を何度か繰り返す感じでしたが少しでも落ち着かれる時間が出来るのであればと思い繰り返していました。怒って、不安で、心配でという気持ちのままずっと過ごしていただくよりは少しでも休める時間があることが大切だと判断していました。

③ご家族様に急用が出来てしまい、遠出していて帰ってこられないため今晩は泊って欲しいと連絡があったと伝える。 夕方になると家に帰りたくなる気持ちが強くなりますよね。夕飯の準備をしなくてはいけない。暗くなる前に家に帰らなくちゃ。レジを閉めなくちゃ…等々いろんな理由がありますよね。

この時間が一番引き留めることが難しいなぁと感じています。そこでご家族様から今連絡があり、ご家族様に急な用事が出来てしまい、取引先の県外に行かれているため今晩は戻れなくなってしまった。申し訳ないが施設に1泊させていただくことはできないかとご連絡があったとお伝えしました。(事実ではないです)

その点は理解してくださる方だったため「じゃぁ仕方がないですね。明日は迎えに来るんですか?泊らせてもらいます。」と納得して泊ってくださいました。次のご利用の時は忘れていたためしばらくはこの手を利用しお泊り頂きました。

④男性職員に協力を依頼しPHSで旦那様のふりをしてもらう。

③で納得されない場合、自宅の番号をPHSで入力するふりをして男性職員に旦那様のふりをして欲しいと依頼し電話に出てもらっていました。自分の耳でしっかりと聞くことで“しょうがない”と納得してくださっていました。

時々「これ旦那の声?」と聞かれた時はひやひやしましたが、そこは男性職員が頑張ってくれました!!本当に感謝!連携プレイです!!

これを繰り返しながら対応をしていたある日事件が!!

いつも手に持ち歩いているカバンを持って来られない日がありました。カバンの中には通帳や印鑑、お財布が入っておりA様が肌身離さず持ちあるっているカバンでした。入所の時は“今日は持って来なかったんだなぁ~”くらいに感じていましたが、これが夜には大変なことに!!

「お金が無い。」「盗まれた。」「家に帰らなくちゃいけないんですよ。」と今まで以上に興奮し落ち着かなくなってしまいました。初めはカバンが無いことが原因だとは思っていなかったため今日はなぜいつも以上に落ち着かないのか分からず対応に困っていました。

対応していて話を聞いているうちに“もしかしてカバン?”と思いショートステイ相談員へ相談。ご家族様に迷惑がかかる、カバンがあれば落ち着くとは限らないとご家族様への連絡を躊躇されましたが、何度も説得し夜中でしたがお持ちいただくことに。

カバンをお渡ししたところ「あった。よかった。」と安心されその後嘘のように穏やかになられました。普段関わっている職員の感は侮れないと思っていただけたことと思います(笑)次回のご利用時から送迎の時にカバンのチェックが必須となりました!!

少しずつ施設にも職員にも慣れてくださり、お風呂にも挑戦!!信頼関係を築けている職員が声をかけ対応し、お風呂とは伝えずに脱衣所へ。椅子に座って頂き話をしながら服を脱いで頂き、さぁお風呂場へと上手くいくわけもなく四苦八苦しながら少しずつ対応していきました。

汗をかいている。食べこぼしがある。服に汚れが付いている等々様々な理由から何を理由にすれば嫌がることなく服を脱ぐことが出来るのか探り、初めて体を洗えた時は職員一同歓喜に湧きました!!ご家族様も喜んでくださり職員冥利に尽きるなぁと感じました。

ここまでくると家に施設内でも安心感を感じていただけるようになり家に帰りたいとの話は聞かれなくなるように。積極的に食器洗いや掃除、調理を手伝ってくださるようになりました。笑顔も多く見られるようになりました。

【事例2】

大声で歌ったり、用事は無いけど大きな声で職員を呼んだり、奇声を上げたり、他利用者様にぶつかったり怒鳴ったりしてしまうB様。また自分の思いが伝わらないと思ったら連続して怒鳴ってしまい他利用者様とのトラブルもしょっちゅう。

こういうタイプの利用者様は大抵1対1で対応すると落ち着かれるのですが、大きな声を出すたびに対応する事ってとても難しいですよね。他の利用者様の対応をないがしろには出来ませんし…。どうにかして落ち着てい頂きたいと悩みの種でした。

そこでご本人様の生活歴から趣味を探すことが始まりました。本当にいろんなことを試し、読書、映画、体操、音楽、計算ドリル、間違い探し、パズル、写経、裁縫、洗濯畳、新聞畳、塗り絵、散歩…。初めは興味を持ってくださっても数分で飽きてしまう。これを何度繰り返したことか…。

この中から数点これだったら集中して行えるというものが見つかり実施して記録していく事に。分析してみて、分かったことは興奮する前に始める事!!少しでも興奮してしまったら「やっている場合じゃない。」と手に尽きませんでした。興奮しそうだなぁと感じたら行うようにしました。

興奮しそうなタイミングって難しいかと思われるかもしれませんが、良く言動を観察していると何かしらサインが出ている事が多かったです。例えば職員を呼び始める・自走し始める・〇時頃からソワソワし始める等…。観察力と記録に残しで分析することが大切です!!だぶん…と言われるよりもデータとしてみる方が説得力あります!!

【事例3】

普段はニコニコで穏やかなC様。そんなC様が機嫌が悪くなる時があります。「あっち行け。」「こっち来るな。」「早くしろ。」と怒り気味に話したり、爪で引っかいたり蹴っ飛ばしたり…。その原因は“便秘”でした。

排泄記録を見ていて、だいたい機嫌が悪くなる時は排便が数日間出ていないことが多く、排便が出るといつものように穏やかなC様に戻ると感じ、そのあとからも排便と機嫌の悪さに注目してみることに。

するとやはり機嫌が悪くなったり、いつもよりソワソワして落ち着きが無くなったりする時は排便が出る傾向にあることが分かりました。すぐ看護師に相談。排便の形状が固くて出にくい感じであったため水分量を増やして便を柔らかくなるようにしたり、下剤調整したりしました。

今まではなんで怒るか分からず困っていた職員も“あっお通じかな?”と原因が分かる為落ち着いて対応することが出来るようになりました。

C様と違いますが、排便がうまく出ないと他にもぐったりしてしまう利用者様や吐いてしまう使用者様もいらっしゃいます。職員がいち早く原因に気が付き看護師と一緒に水分量の検討やその方に合った下剤に変更する等他職種連携できるととてもいいですね。

腸を動かす運動や食物繊維の多い食事を摂る、例えばビフィズス菌やヤクルト、ヨーグルト、寒天、プレーン、納豆等々何がその方に合う物か検討していける環境があれば試すのもいいですね。表を作って2週間ずつ試したことがありあますが、見えるかすることで何が合うのかが一目で分かりました。

上記3例が対応によって目に見えて変わったと思えた対応でした。これ以外にもたくさん困ること、何が原因かまだ分からない事等がありますが、みんなで観察して原因を突き止めて利用者様にとっても安心して過ごせる環境を作っていきたいですね。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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