第28回【利用者様の凄い力と受けた被害8選】

第28回【利用者様の凄い力と受けた被害8選】

認知症の利用者様の中には理性が効かず火事場の馬鹿力を繰り出される方がいらっしゃいます。理性が効くならばそこまで被害を被ることはないですが、理性が効かないというのはとても恐ろしいなぁと感じています。お年寄りと言えど成人ですので出す力は計り知れません。今回は私が受けた・目撃した事をまとめました。

【1. 車いすのブレーキを折って投げてきた】

車いすのブレーキって折れるの?って衝撃を受けた出来事でした。自殺願望が強い男性利用者様で比較的若く、体格も良い方でした。とにかく自殺願望が強いというアセスメントを受け取っていましたが、目を離せない程凄く、ベッドのナースコールのコードやカーテンをまとめる紐などすぐに手に取ってしまう方でした。

従来型特養に勤務していた時で多床室対応でしたが、昼夜問わず大きな声を出して叫ぶ上にベッドから降りて廊下を這う毎日。1対1で対応できればまだいいのかもしれませんが、時間に追われながら分刻みのスケジュールをこなしていると対応が難しい状況でした。

なんといっても体格も良く若いこともあり力がとても強く、女性職員では到底太刀打ちできない・男性職員でも1人では対応できない感じでした。ご家族様の要望もありリビングで過ごしていただく際は拘束帯を使用していました。それでも意味がない程だったため、今では考えられないですが柱に縛っている状態でした。

そんなある日「警察を呼べ~。」と大きな声を出しながらブレーキを弄っているなぁと思っていたら何かが目の前を高速で異動していくのが目に入りました。よく確認するとなんとそれはブレーキの棒!!“えっ!どういう事?”と思うと同時に“マズイ”と思い男性利用者様を見ると反対側のブレーキの棒を折ろうとしている仕草が!!

従来型特養ということもありリビングには大勢の利用者様が…。他利用者様へ危害が加わる可能性が高く、とにかく大きな声で事務所職員へ助けを求めました。男性職員が利用者様の手を止め何とか反対側のブレーキを折られることは防ぐことが出来ましたが、正直どう対応していいか分かりませんでした。

施設で対応するレベルの利用者様ではなかったことは言うまでもなく、精神科に入院していただくレベルの利用者様だったと感じています。その後どうなったのか記憶が曖昧ですが、他利用者様への危害が及ぶ可能性が高いとの事で退所になったと思います。衝撃の出来事でした!後にも先にもブレーキを折った方はこの方だけでした。

【2. 送迎中後ろからサンダルで殴られる】

ショートステイ担当をしていた時の事です。行政から緊急ショートの依頼があり送迎に1人でいく事になりました。上司からは行政の人が一緒だから大丈夫だと言われたので鵜呑みにして行ったのですが、この出来事以降緊急ショートの受け入れ時は1人では絶対に送迎に行かないと心に決めました。

独居で一軒家に住まわれていた方。訪問介護等を試したそうですが介護拒否をされるため入浴はもう数年入っておらず、食事もまともに取っていない、家の中はゴミ屋敷状態で保護が必要と判断されたとの事でした。自宅に到着するとすでに行政の方が中に入って話をされていました。

家を出るとなるととても嫌がり家を出るまでに1時間程かかりました。何とかスーパーに買い物に行きましょうという事で納得され施設の車に乗って頂けましたが、この後が恐怖との闘いになるとはこの時点では思ってもいませんでした。

施設の車に乗車してからは行政の方は関わらなくなり、施設までは私1人でお連れすることになります。出始めは良かったのですがスーパーの道から離れたと知った途端から様子が豹変します。「こっちじゃないだろう!だましたな!この野郎!!」と叫び始め、急に頭頂部に痛みが走りました。

何事かと車を急停車するとスリッパを手に取り思い切り私の頭を何度も殴打し始めます。運転中にこのような暴力を受けては危なくて運転できません。ちなみに車いすに座っていてシートベルトも締めている状態での攻撃でした。利用者様情報の入ったファイルも手に取り痛い角でも攻撃してくる始末。

一旦車から外に出て施設へ応援を求めました。職員が出払っていて助けに来られないと言われた時は泣きそうになりました。その場にいつまでも停車して待っている訳にもいかないため、利用者様の手の届く範囲には何も置かないようにし、スリッパもお預かりして再出発することに。

運転中はなるべく前かがみになり後方から手が届かないようにしていました。髪の毛も引っ張られ、途中途中運転を止めながら1時間程度時間をかけて施設までたどり着いたように覚えています。施設に到着すると安堵から涙が流れたのは今でも覚えています。これほど怖かった事はありません。

施設に到着すると他の職員にはニコニコと話されていて豹変ぶりに驚きました。初めは知らない人が多く猫をかぶっている感じでしたが次第に素が出てき始め職員に手を上げ始めケアすることがとても大変でした。衛生上の観点から入浴をして頂く事が最重要課題でしたが中々うまく行きません。

声かける職員を変え・声掛けの文言を変え・時間を変えるなどして諦めず声をかけ続けていきました。それでも1週間ほどは全くお風呂に入ることが出来ず苦戦していました。排泄介助も勿論拒否される為失禁していても着替えすら出来ない状況。多床室では他利用者様に迷惑が掛かってしまうため個室対応していました。

初めて入浴することが出来たときは職員一同感激した事を今でも鮮明に覚えています。こういう変化を感じる事がやりがいに繋がっているのかもしれませんね。1度お風呂に入れるとその後はいろんな面で改善するスピードが速まります。暴力が嘘のように穏やかになられたのがとても印象深かったです。

【3. 顔をグーで殴られる】

これは元格闘家の認知症男性利用者様の話です。認知症があり、感情のコントロールが難しい利用者様でした。物事の良し悪しも忘れてしまい、他利用者様の部屋に入ってしまう事や他利用者様の部屋やユニット内・廊下などで放尿・放便をされてしまう方でした。

元格闘家という事もあり足腰が丈夫であちこち行って粗相をしてしまう毎日。その対応に職員も疲労困憊していました。利用者様からもその利用者様が来ると「こっちに来ないで。入らないで。」と怒ってしまい、居室に鍵をかけて欲しいとの要望が聞かれました。

施設内でも対応について話し合いを重ね、利用者様の要望に合わせ男性利用者様が来るときには部屋に鍵をかけて入れないようにするという方向性で対処することになりました。しかし、他利用者様の介助中などでずっとその男性利用者様の行動を把握することは難しく、気が付いたらもう来ていたなんて事が多々ありました。

鍵閉めが間に合わず利用者様の部屋に入られてしまった時は対応がとても難しく、無理に出て頂こうとすればすぐ手が出てくるので恐る恐る対応していました。居室が気に入ってしまうと中々出てくださらず、自分のユニットの利用者様の対応をしたいのに20分以上もその方に付き添う事がとても負担でした。

男性利用者様が生活しているユニットの職員はユニット内で問題を起こされるよりも他に行ってもらった方がいいからと散歩に出ていっても全く関わろうとせず、処理もすべて他のユニットの職員が対応していました。これは問題になり生活しているユニットの職員に連絡して対処してもらうという事になりました。

それでも電話をすると「今は無理なんだけど。」と言われたり「ユニットから出してくれればいいから。」とそっちで対応してくれという態度…。私が対応するユニットの利用者様とトラブルになることも徐々に増え手が出てしまう為間に職員が入らないとまずい状況が増えつつありました。

ある日他利用者様の介助をしているとユニット利用者様の悲鳴が聞こえすぐに向かうと、元格闘家の男性利用者様が怖い顔つきで女性利用者様の前に仁王立ちになっていました。これはまずいと思いすぐ間に入ろうとした時です。いきなりグーのこぶしが私の顔に飛んできました。

グーで顔を殴られるなんて経験したことが無く、歯が折れたかと思う程の痛み…。女性利用者様を狙ってだったため、間に急に入った私へのダメージは100%ではなかったと思いますが、そうはいえ元格闘家!足腰も丈夫なだけあって威力が半端ではありませんでした。

女性利用者様への被害が無かった事は良かったですが、この時なんで間に入った私が殴られなければいけないのかと思いましたし、対応を他のユニット職員に押して付けて放置しているユニット職員への怒りがこみ上げてきました。

この問題からユニット玄関にも鍵をかけ利用者様とのトラブルにならないようにするという決まりとなり、男性利用者様には廊下を自由に歩いて頂くという事になりました。しかし今まで自由に入ることが出来ていた場所に急に入れなくなると認知症の為混乱が生じます。

ユニット玄関を思い切り開けようと“バンバンバン”と叩いたり“ガンガンガン”と無理やり開けようとするためとうとうユニット玄関が壊れてしまいました。最終的には他利用者様への危害が加わる可能性が高いという事でご家族様と面談を重ね薬で落ち着いて頂く事になりました。

薬で状態を落としてしまう事は本来良くないことですが、他利用者様へ危害が及ぶ可能性が高い事・元格闘家で認知症という事で理性が効かず力の加減が出来ず命に関わる危害を加えてしまう可能性が高い事から担当医や看護師も含め話し合って決まりました。

そうなるまでの時間は利用者様もですが私たち職員も恐怖でしかありませんでした。介護士って虐待している報道は沢山されますが、こういう被害を受けている事ってほとんど表に出ないですよね。何のために我慢をしなくてはいけないのか分からなくなり、介護自体辞めたくなった出来事でした。

【4. メガネが吹き飛び壊される】

これはメガネをしている介護士ならばあるあると思っていただけるのではないでしょうか。認知症があり手が出る方はだいたい顔を狙ってくることが多い印象があります。排泄介助や移乗介助で利用者様に近づいたタイミングで襲ってきます。

狙って行う事もあれば無我夢中で手を出してたまたま当たってしまう事もあります。避ければいいだけの事だと思うかもしれませんが、介助中に手を離したことで事故が発生した場合、介護士の責任になってしまうため何をされても手を放すことが出来ません。

ベッド上での排泄介助中であれば離れる事は可能ですが、抱えている最中だった場合絶対に逃げられません。なので手が出ないように介助する方法を模索する必要があります。だいたいは介助方法に問題があって嫌がって手が出る事が多いかなぁと感じています。

声のかけ方・トーン・大きさ・介助の乱暴さ・いきなり介助する等を行わない事が大前提!利用者様の目線に合わせて体勢を変え、目を見て話しかけ、適切な声のボリューム(耳がいい人に大きな声で話しかけない等)で声を意識するだけでも大分反応が変わってくると思っています。

中にはそれを行っても理解できなくなってしまった方もいらっしゃいますが、たいていの方は上記の事を意識すると変わって来るかと思います。軽く膝や肩に触れる・手を握ってみるという事も有効だと思います。触れられると安心するのだと感じています。出来る範囲の事で自分たちも変わらないといけません。

【5. 腕や指、胸を歯で思い切り噛まれる】

これは口腔ケアや排泄介助の時にやられがちです。歯磨きをする時に歯磨きが理解できない利用者様は思いっきり職員の指をかむことがあります。思い切り噛むと人の力でも指が切れてしまう事がある程とても強い力で噛んできます。骨折した職員もいました。

歯磨き介助の際に歯があって噛んでしまう方にはそれを保護するものが売られていますので、必ずそれを装着して介助を行います。それを指にはめていてもかむ力が強くて割れてしまわないかと不安になることが度々あります。怖いですが、かといって歯磨き介助をしないわけにもいきません。危険と隣り合わせです。

腕や胸をかまれるときはだいたい排泄介助で2人対応の場合が多いですね。利用者様の前側に立って体を支えている職員が噛まれる率が高いです。腕はもう歯形が付くほど何度もかまれました。出血した事もあります。噛まれて出血した際は早急に皮膚科受診が必要です。

何故ならば人の口の中にはいろんな菌が沢山あるからです。菌が体内に入ることで感染症を起こす可能性もあるので病院へ行って適切な処置をしてもらう事が大切です。検査をしていないだけでB型肝炎・C型肝炎・梅毒等持っている可能性が無いとはいえないからです。

手袋をしないで歯磨き介助やトイレ介助をしている方を見かける事がありますが、もし手に小さい傷があったとしてそこから感染するリスクがあるので、面倒でも自分を守る為にも手袋はしっかりと着用した方がいいと思っています。つけていない人がいた場合、感染のリスクを伝えると使用する人が多いですね。

また、胸をかまれる理由としては身長差です。小さい利用者様や膝が伸びずに曲がっている状態で立った場合、顔の口あたりが丁度胸の高さになることがあります。その時に抵抗しようとして噛める場所を噛むので本当に痛いです。恥ずかしい話ですが、被害者結構いて私自身あるあるなんだなぁと感じています。

腕や胸を噛まれた時、本当であれば「痛い。」と言ってその場から離れたくなりますが、利用者様を抱えている状態ではそうはいきません。腕を話した途端に利用者様は床に落下し最悪骨折事故に繋がります。利用者様の病院受診が発生するのはもちろんことですが入院する事やご家族様から訴えられる場合も出てきます。

そう考えると痛みよりもいろんなリスクを回避するために痛みに耐えながら頑張って手を離さないようにしますよね!どんだけ忍耐的な仕事なんだろうとこれを書いていてしみじみ感じています。これらを我慢しながらケアをしていますので、とっさに手が出てしまう気持ちも分からなくはありません。決してやってはいけませんが!

【6. 抱えている時にひっかいてくる・皮膚を引っ張りねじる・爪を立てる】

これも結構あるあるですよね。介助しようとして爪で引っかかれ、子供と違ってどうやったら痛みを感じるかを知っている為痛いつねり方をするんですよね…。皮膚の薄い部分を引っ張ったり、皮膚の先端部分の本当に皮だけを爪で引っ張ってきたり本当にイラっとしてしまう事をしてきます。

想像していただいただけでも痛さが分かるのではないでしょうか。そこからさらにつねりを入れられてみてください。悶絶する痛みが走りますし、出血もします。両腕にどれだけ傷が出来たことか…。夏場でもDVを疑われてしまうのではないかと半袖が着られない時期もありました。

長袖を着ていればまだ傷も薄いですが、夏場にまで長袖を着て仕事することは熱中症で倒れてしまうため出来ません。いかに噛まれないか・噛まれても早く離してもらえるかが大事で、逃げようとするとさらに強い力が加わり大けがする可能性があるためじっとしている事が結構有効です。

あきらめが入って来ると「もう噛みたいなら噛んでいいですよ。」「気が済むならどうぞ。」と腕を先に差し出すこともありました。案外そうした方が「やらねぇよ。」とやらない事が多いなぁと感じていました。先に相手のやる気をそぐことも有効ですかね。

【7. テレビや棚・扉を破壊する】

これは暴れてしまう利用者様がやりがちです。興奮状態が収まらないため力が凄く入った状態で動き回ります。手に取れるものはすべて手に取って投げる・むしり取り・壊す。破壊力が半端ではありません。【1.】でご紹介した男性利用者様の車いすのブレーキを折ることもそうですよね。

大抵施設の備品等を破損した場合には内容にもよりますがご家族様へ請求させていただく場合があります。壊されるたびに施設の費用で修繕していては経営が成り立たなくなってしまうため仕方が無い部分があります。こういう利用者様がいる場合には何も置けない・しっかりと固定して取れないようにするしかありません。

いくらケアをしなくてはいけない利用者様としてもケアするにも恐怖しかありません。認知症という理由だけで傷害等で訴えられない暗黙のルールみたいなものがありますし、職員が我慢するという悪い風潮をどうにかしなくてはなり手が育つはずもないと感じてしまっています。

【8. 便をこねた手で触ってくる】

利用者様の便を弄ってしまう方がなんと多い事か…。部屋に入って便臭がすると思い布団をめくるとシーツから柵、さらには自分の顔まで便まみれなんてこともあります。そうなるとシャワーで洗ってしまうのが一番手っ取り早い・綺麗に出来る為お風呂介助を行います。

その時に便をこねた手を伸ばされると「いや~。」っと悲鳴をあげたくなります。私はそうならないように手袋を装着していただき、一番初めに洗面台で手を良く洗う事をしています。手が綺麗だったら触れられたとしても綺麗な状態なので便を付けられることはありません。

ただ、爪の中まで綺麗に洗わないと危険です。爪で引っかいてくる方もいるので、その場合には爪の中の便が傷口に塗られることになるからです。排便にはたくさんの菌が含まれています。尿の菌よりも危険だと感じています。爪専用の個人用ブラシを用意しておくことをお勧めします。

便の処理って排尿よりも大変で、便が付着したシーツは擦り洗いをして漂白剤につける必要があります。また付着した箇所もアルコールや次亜塩素酸を使用しながら拭いて清潔な状態に戻します。排便のふき取りが長時間できていないと黄色く変色してしまう事もある為なるべく早急に綺麗にすることが求められます。

色だけでなく臭いの原因にもなります。部屋に入るたびに便臭のような香りが感じるのは嫌ですよね。ご家族様が面会で来られた時や部屋を移動した時にあとから入る利用者様だっていやですよね。時間の経過とともに壁も臭いを吸収してしまうため綺麗にとりきれているか確認することも必要です。

以上の事が利用者様から受けた被害についてです。いかがでしたか?介護をしている人であれば何かしら経験があるかと思います。まったくこういう事実を知らない方にとっては衝撃の出来事ですよね。しかしこれが現実です。少しでもこういう現状をして頂けたらいいなぁと感じています。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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