第20回【看取りの時に意識している事 9選】

第20回【看取りの時に意識している事 9選】

【看取りの時に意識している事9選】
看取りって何度経験しても“本当にこのケアで良かったのかな?”“もっと出来る事はなかったかな?”と自問自答してしまいます。これが正解なんてことは無い分毎回毎回考えさせられ、ケアの見直しを行いつつ対応しています。悩んだ分回数を重ねるごとにケアの質は良くなっていますが、それでも悩みは尽きません…。

不安や葛藤に加えご家族様の対応、他の利用者様の対応、他職種連携等々いろんな事がありますよね。今回は私が看取りの時に意識している事をまとめてみました。Instagramの方でも反応があったので同じように悩まれている方がたくさんいらっしゃるのだと感じています。少しでもお役に立てれば幸いです。

【1. 食事は無理をしない】

看取り期の食事に関しては毎回カンファレスの時に議題に上がります。それほどどうしたらいいかという判断は職員によって意見が様々です。食べられる量でいいと思う職員・無理くりにでも出された分は食べて欲しいと思う職員・少し食べただけですぐに回収してしまう職員、本当に様々です。

また、職員間だけでなくご家族様の希望であってもご本人様が食べられる状態ではない食形態の場合もあります。説明しても「好きだったものなので…。」「これは食べて欲しい。」との希望。ご家族様の気持ちは理解できるのですがそれを食べた場合誤嚥するリスクもある。または量が多すぎて食べきれない等の問題もあります。

食事に関しては他職種連携が重要だと感じており、栄養士・看護師・ケアマネージャー・介護職員とが何度も話し合いを行っていく必要があると感じています。想像しやすいように実際の現場で起きた事を例に挙げてみたいと思います。

介護現場の大多数の職員が食事介助をするのが怖いと思うほど咽こみが酷い方がいらっしゃいました。看護師に相談しており看護師側も「無理すると窒息・誤嚥するから食べられる量でいい。」と話す人と手を抑えてまで食べさせ「全部食べたよ~。」と全量食べる事がいいと思っている看護師がいました。

このように看護師側でも人によってどうするのがいいか意見が分かれる部分です。しかし、無理やり全量を食べた後はその後に嘔吐されたり、誤嚥されるのか熱発されたりすることがほとんどでした。記録を見返す限り全量食べたときに限って夕方に熱発というパータンが多かった為カンファレンスを開くことにしました。

食べた後に嘔吐や熱発をされてしまうと看取り期での体力がさらに消費されてしまう事、食べたい時に食べたいものを食べられる量でいいのではないかという事を話し合い、無理せず本人の体調に合わせて対応するという事に決まりました。ご家族様にも報告しその方向でいいか了承を得てもらいました。

今では臭いのスプレーというものもある為、食べられなくても臭いで感じていただくという方法もいいと思います。死に向かって徐々に体力が落ちていきますが、介助者の無理なケアでその期間を短くするのは良くないなぁと感じています。辛い思いをしないで最期を迎えていただきたいと考えてケアしていきたいです。

【2. こまめに部屋に伺う】

看取り期に入ると起きている時間が徐々に短くなってきます。起きている時間が短いと食事の時や排泄介助、お風呂や清拭の際位しか関わりが無くなってしまいがちです。寂しい思いをして頂きたくないため部屋の前を通過するたびに部屋に伺い声をかけるように意識していました。

中にはコールを連打されたり叫ばれたりする方もおられ、その原因が「寂しいの。」と話されることが多かったです。部屋を閉め切りにせず部屋の外の音が聞こえるように工夫したり、目をつぶっていても耳は聞こえている事が多い為今日の天気や何の日かを伝えるようにしたりしています。

こまめに部屋に伺う事は利用者様の状態を観察する事にも繋がります。肩呼吸が始まった・痰がらみが酷い・口腔内の乾燥が見られる・口腔内がカサカサしている・下顎呼吸が始まった・末端の冷えが見られるようになった等細かな情報を得る事も出来ます。

細かな観察が息を引き取っている事に気が付かなかったという事を防ぐことにもなりますし、看護師やケアマネージャーとの連携にも繋がります。ちょっとでも気になったことがあれば報告し、記録に残せると良いなぁと思っています。忙しい時もありますが意識して顔を見に行くようにしています。

【3. ご家族様との時間を作る】

看取り期に入ってからすぐに亡くなってしまう方・数年経ってから亡くなる方と亡くなり方は人それぞれです。いつ亡くなるかなんて医者にも看護師にも介護士にもわかりません。ですが、そろそろかなぁと感じる事は出来ます。日ごろからご家族様に様子を伝える事が大切だと感じています。

面会にいらっしゃった際にはその日の様子や直近の出来事についてお伝えしたり、お部屋でご家族様が過ごしやすいようにテーブルや椅子などを設置したりしています。施設によってはポットやコップを用意しているところもありました。

また、施設によってですが宿泊できる事もあり、ご家族様が遠慮なく“泊まりたい”と言っていただけるような雰囲気作りが大切だなぁと感じています。職員に遠慮してしまい泊まれないという関係性よりも安心して“泊まる”という選択が出来るように日ごろから会話をして関係性を築けるように意識しています。

これは私の体験談になります。看取りを経験していくにつれ“そろそろかも”と思うようになることが増えてきました。面会によく来てくださるご家族様であれば都度報告できるのですが、中々面会に来られないご家族様の場合は自分の直観を信じてケアマネージャーに伝えご家族様へ面会の依頼をしてもらいました。

数日後に面会に来られましたがその夜に帰天されたという事がありました。ご家族様より「最後に会えてよかった。このまま会えないままお別れしてしまったら後悔していた。」との話がありました。直観を信じてご家族様へ面会の依頼をしてもらって良かったなぁと感じた出来事でした。

介護の仕事をしていて看取りを何度か経験していくと不思議と直感がさえる時があります。部屋に入った瞬間に“ん?”と感じたり、臭いや表情から感じたり、根拠はなくただの直観なのでなんとも説明しにくいのですが、こういう感って結構当たるんですよね…。

またあるご家族様は看取り期に入ってから何度も面会に来てくださりその度にお部屋で数時間過ごされていました。最後の時は娘様たちに看取られながらお亡くなりになられましたが、ご家族水入らずで過ごせた時間は良かったと感謝されていました。

それ以外にも親子関係の溝が修復されたり、職員と一緒にケアをして頂くことで“何もしてあげられなかった”という思いを少しでも減らせたりすることが出来たらいいなぁと思っています。ご利用者様も最後は会いたかったご家族様の顔を見る事が出来て良かったのではないかと感じています。

【4. 音楽をかける】

【2.】でも書きましたが、看取り期に入ると起きる時間が徐々に短くなってきます。静かに過ごしたいという方には行っていませんが、寂しさを感じられる方や音楽が好きな方、テレビ番組が好きな方にはご家族様に相談して施設備品をレンタルや持ってきていただいたりしています。

好きな音楽やテレビ番組・映画等があれば持ってきていただき部屋で流すようにしています。また、部屋の扉を少し開け廊下の音や人の話し声が聞こえるようにもしています。何もないよりも穏やかな表情をされていたり、「嬉しい。」と話されたりしていました。

音楽以外にも好きな香りがあればお部屋で焚いたり、コーヒーが好きだった方には部屋にコーヒー豆を用意してみたりしました。飲めなくても唇にちょこっとつけてあげるだけで嬉しそうにされていました。出来る範囲で可能な事を行っていけたらいいなぁと思っています。

寂しい思いをしてしまわないように、好きな物に触れながら穏やかに過ごせるように出来る事を行っていきたいです。まだ元気な時から本人やご家族様から沢山の情報を得ていく事が“鍵”になってくると思います。看取りに入ったからではなく今から出来る事をしていけたらいいですね。

【5. 皮膚トラブルを作らない】

寝ている時間が増える事・栄養バランスが悪くなることから皮膚トラブルがおきやすくなります。皮膚トラブルが起きると痛みを生じてしまいます。痛い状態で寝ているのは辛いですよね。皮膚トラブルを作らないように看護師や理学療法士、作業療法士と連携していく事が大切になってきます。

褥瘡は仙骨、腸骨、踵にできやすいため圧抜きや圧がかからないようなポジショニングが重要です。体位交換の時間が適切か、使用しているマットレスは合っているのか、排泄による患部への影響がないか等を検証していく必要があります。

状況に応じて除圧マットやエアーマットに交換したり、体位交換の向きを褥瘡部に圧がかからないような方向にしたり、排泄の尿量や排便リズムに合わせて排泄時間を見直したりすることが重要だと感じています。褥瘡にならずに済んだ時は“良かった”と安堵します。

褥瘡などで痛々しい姿を見るよりも綺麗な状態の方がご家族様も嫌な思いをされないかなぁと思います。職員の頑張りになってしまいますが皮膚の状態をよく観察し報告していく事で小さい皮膚トラブルで済むように出来たらいいなぁと思っています。

保湿はとても大切なので排泄介助の度・口腔ケアをした時・部屋に伺って気になった時などいつでも塗れるように部屋に用意しておくといいと思います。ボディークリームも成分によっては余計に乾燥が見られてしまう物もあります。看護師と相談して対応していけたらいいですね。

【6. お風呂の回数を調整する】

お風呂って結構体力を消耗するんですよね。本来ならば週2回の入浴が義務づけられていますが、体調に合わせて1回は入浴、1回は清拭等調整することも必要だと思っています。看護師と相談して無理のないように清潔保持をしていくようにしています。

状態が悪い時には週2回とも清拭にする場合もあります。入浴してさっぱりして欲しいという気持ちもありますが、無理して体力を奪ってしまっては元も子もないので看護師の指示に従って行うようにしましょう。以前、数週間入浴が出来ない状態の利用者様をお風呂介助したその日に亡くなられた方もいらっしゃいます。

入浴の判断はご家族様より「入れてあげて欲しい。」との要望がありそのうえで行いました。ご家族様からは「最後にさっぱりしてよかった。気持ちよかったね。」と言っていただけましたが、入浴後に帰天されてしまう場合もあるんだなぁと体感した出来事でもありました。

リスクがある場合は看護師と一緒に入浴介助を行う事もありだと思います。その方が介護士の方も安心できます。施設によって対応が変わってくるかと思いますが、看護師に相談してみるのもありかなぁと思っています。一緒に居てくれるととても心強いです!!

【7. シュミレーションする】

日中人手が多い時間帯であれば看護師も事務所職員も居るので安心ですが、1人の時間になると不安になってしまいますよね。看取りの経験が無い職員や経験が浅い職員であればとても不安に感じる事が多いと思います。そんな職員さんとシュミレーションを行うようにしています。

マニュアルがあればマニュアルを用意し分からない箇所が無いか確認します。分からない部分があった場合には説明をし、理解してもらったところで流れについて一緒に確認しています。マニュアルが分かりにくい時はわかりやすく噛み砕いたシートを作り用意し、見れば行動できるようにもしていました。

それでもパニックになってしまいどうしたらいいのか分からなくなってしまう場合もあります。そんな時はいつでも連絡をしていい旨伝えておきます。その声をかけておくだけでも大分安心材料になるみたいですので是非声をかけてあげてください。

また、ご家族様がいらっしゃった場合は介護士が伝えてはいけない言葉についても説明しておきます。間違っても「お亡くなりになりました。」「ご愁傷さまです。」等は医者の死亡判断が出てからでないと言えない事、ご家族様より報告があった場合には「看護師に報告します。」でとどめておく事等伝えています。

看護師が到着するまでの間不安だと思いますが、死亡判断は医者にしかできません。介護士の立場としては呼吸が確認できない位しか言えません。言ってしまいそうになりますが、言わないように伝えるようにしています。突っ込んでくるご家族様は「何故お前が判断するんだ!」と怒ってきます…。

【8. ご家族様のフォロー】

看取りはご家族様のメンタルフォローを大切になってきます。介護士側は利用者様の1人と思ってしまいますが、ご家族様にとっては大切な方です。本当に看取りで良かったのか・病院に行った方がよかったのではないか・何かしてあげられたのではないか等不安や葛藤を抱かれています。

面会が多い方の場合は面会に来られるたびに声かけ、話を傾聴するようにしています。また、帰天された際にはご家族様へ感謝をされていた事や面会に来てくださり顔を見る事が出来ただけで安心できたと思う事や嬉しかったと思う事等ご家族様が自責してしまわないような声掛けを意識しています。

以前勤めていた施設での話ですが、帰天後荷物を整理しに来られたご家族様が挨拶をしても事務所職員全員スルーしてしまったという事があり苦情に繋がりました。当たり前だと思いましたし、すごく恥ずかしいなぁと思いました。現場で一生懸命対応してもちょっとしたことで印象は変わります。

施設全体としてどうご家族様の対応をしていくのかきちんと指導していく必要があるなと感じた出来事でした。挨拶を無視する施設はほとんどないと思いますが、こんな恥ずかしい苦情が出ないようにしていかないといけませんね!!

【9. 職員のフォロー】

看取りの経験が無かったり浅かったりする職員や看取りが続いてしまった職員へのフォローを意識しています。施設によっては看取りの後にご家族様と一緒に湯灌やエンゼルケア・セレモニーを行う事もあります。普段の業務以外に行わなくてはいけないことが多く精神面での負担も大きいです。

看取りが続いた時も“また私の時だ”と繊細な職員の場合凹んでしまう事があります。中には泣いてしまう事もあります。それだけ看取りは職員のメンタル的な負担も大きいです。看取りに対して不安はなかったか・困った事はなかったか・今の気持ちはどうか等聞くようにしています。

場合によっては落ち着くまで休憩室で休んもらいその間フォローに入る場合もあります。職員に合わせて臨機応変に対応していけるといいですね。また、他の職員や他職種の職員からの理解をしてもらう必要もあるなぁと感じています。心もとない声をかけられたらダメージが大きくなるからです。

以前の施設での出来事ですが、1か月に数名看取り対応をした職員がいました。その月以外にも当たっており精神的に大分ダメージを受け話かけるだけで涙が出てきてしまっていました。転職したばかりであったため、こういう場合のメンタルフォローはどうしているのか施設長に相談しました。

すると、その職員を呼んで「看取りでなんで泣くんだ?」「本を読んで勉強したらいい。」と言い放ったそうです。それを言われた職員はさらに落ち込んでしまいました。連続でしかも1か月のうちに数名看取る事って精神的にダメージが大きいです。

私も何度も看取りを経験している為、対応した職員の気持ちの辛さが痛い程分かるからメンタルフォローを依頼したにもかかわらず、逆にメンタルをえぐる結果になってしまいました。その職員に対し申し訳ない気持ちでいっぱいで謝る事しかできませんでした…。

施設長の立場の人ががそれを理解できないと結構辛いものがあるなぁと感じました。看取りを行うのであればメンタルフォローのスキルも身に着けて欲しいなぁと思う出来事でした。学ぶ事はもちろん大切ですが、経験した人にしか分からない苦悩やメンタル的ダメージがあるのでそこを見てあげられたらなぁと思っています。

以上の9つが私が看取りを行っていて意識するようにしている事です。書いていても実際には出来ていない事も多々あると思います。少しでも“寄り添う”事が出来たらいいなぁと思いながらコミュニケーションを取っていけたらと考えています。

看取りっていいなぁと感じる事が多いですが、利用者様・ご家族様・職員のフォローも大切になってくると感じています。施設全体でどのように対応していくのか事例検討を含め対応していけたらいいですね。



プロフィール

介護の学校を卒業し、介護福祉士として働き始めました。

介護福祉士歴14年で、26歳の時に、半年間ベトナムでの施設ボランティアを経験しました。

介護施設は現在で5社目で、今はリーダーとして働かせていただいています。

身長150cm台の小柄な介護士として

Instagramでは介護をする方へ少しでも役に立てるような発信をする活動をしています。

「今日が1番若い日」を心がけて、お年寄りに接しています。

介護士歴12年目、リーダー歴約10年です。


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